artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2019年11月1日号[テーマ:文学とアートの関係を思索するための5冊]
2019年11月01日号
月替わりのテーマに沿って、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。今月のテーマは、読書の秋にちなんで「文学とアートの関係を思索するための5冊」。国立新美術館で開催中(2019年11月10日まで)の「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」などの展覧会でも試みられている、文学、テキストや「読む・書く」という行為とアート、この両者の関係を新しく照らし出すための5冊を選びました。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます
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ぼくの美術ノート
イラストレーターとして知られ、世田谷文学館での回顧展「『かわいい』の発見」も記憶に新しい、原田治による「美術」にまつわるエッセイ集。その対象とするものは、美術館などで見られる作品にとどまらず、長谷川町子の漫画や民芸品、街の風景などにも及び、その観察眼を通して書かれる文章はどれもユーモラス。造形に携わる人ならではの着眼点とその解像度を疑似体験できる一冊です。
詩とイメージ マラルメ以降のテクストとイメージ
美術と詩の関係性を刷新したと言われる19世紀フランスの詩人、ステファヌ・マラルメ。『乾坤一擲』など、視覚的にアプローチする詩の表現や書物の見せ方は、文学界や美術界だけでなくデザインやタイポグラフィなどにも強い影響を与えました。彼の仕事の革新性を国内外のさまざまな研究者がそれぞれの視点から分析する論考集。
こんにちは美術1 めくってたんけん!いろんな絵の巻
展覧会ウォッチャーとしての顔も知られる小説家・福永信が文と構成を担当した、現代美術の鑑賞入門としての絵本シリーズ1作目。現代美術に初めて触れる子どもの頭も、現代美術に苦手意識のある大人の頭も柔らかく解きほぐしてくれる、ユーモアの効いたテキストたち。掲載の作品には美術館の所蔵作品や公共の場所にあるパブリックアートも多く、気になったら実物を観に行けるのも嬉しいところ。
読書の日記
東京・初台にある〈本の読める店〉「fuzkue」店主の1年間の日記本。その書名が表わすように、日々さまざまな本を読んで暮らす著者の日常を覗くことができる圧巻の1120ページ。数々の本のタイトルと肩を並べるかたちでときどき登場する、著者が鑑賞した映画や演劇、展覧会についての描写も本書の密かな読みどころで、観ること、読むこと、生活することがひとりの人のなかで溶け合う状態の豊かさに思いを馳せてしまう一冊です。
月と六ペンス(新潮文庫)
1919年に発表されたサマセット・モームの名作伝奇小説。主人公の友人であるストリックランドは、後期印象派の画家ポール・ゴーギャンをモデルにしたと言われており、芸術と現実の間で揺れた彼の生涯を通しての苦悩が描かれます。小説家である主人公は芸術に大して興味を持たない人物として描かれ、そんな視点からとらえたストリックランドという人物の異質さ・興味深さの描写は読み手をどんどん引き込んでいきます。
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https://honto.jp/
2019/11/01(artscape編集部)