artscapeレビュー
レスリー・キー「Bookish」
2019年11月01日号
会期:2019/10/17~2019/11/04
札幌PARCO 5階特設会場[北海道]
北海道在住の写真家たちによって2007年に設立された団体、THE NORTH FINDER(NPO法人 北海道を発信する写真家ネットワーク)は、2007年から毎年秋にSapporoPhotoを開催している。今年も、市内大通りの札幌PARCOの特設会場で、本展をはじめとして、The North Finderのメンバーたちが「食」をテーマにした作品を出品した「Story of Hokkaido Foods」展、「平成最後の一日」と「令和最初の一日」の写真を一般公募した「時代を超えて MILESTONE 〜最後で最初の48時間〜」展などが開催された。また、別会場の新さっぽろギャラリー(札幌市厚別区)では、本年度の東川賞特別作家賞を受賞した奥村淳志の「「弁造」から「庭とエスキース」へ」展も開催されていた。
その中でも、一番見応えがあったのが本展で、シンガポール出身でアート、広告、ファッションなど多彩な分野で活動しているレスリー・キーが、アート・ディレクターの井上嗣也の企画で「本好き」をテーマに撮り下した作品が並んでいた。『みづゑ』、『ヤミ族の原始美術 その芸術学的研究』、『Leica Photographs』など、渋いラインナップの書籍と、ファッションモデルっぽい男女の取り合わせが絶妙で、被写体の魅力がうまく引き出されている。元々は東京、京都のライカギャラリーで展示されたシリーズだが、ほぼ全作品を一堂に会するのは今回が初めてだという。ちょうど札幌PARCOが改装中なので、閉店したテナントの什器をそのまま使って会場を構成している。だが、逆にそのややチープな仮設会場の雰囲気が、レスリー・キーのざっくりとしたカメラワークとうまくフィットして、開放的で生命感あふれる展示になっていた。
SapporoPhotoの企画としてはやや異色だが、広告やファッションの領域をより積極的に取り込んでいくことも今後の可能性として考えられそうだ。
2019/10/20(日)(飯沢耕太郎)