2019年11月01日号
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artscapeレビュー

風間雅昭「『路上の記憶』1968-1971」

2019年11月01日号

会期:2019/09/07~2019/10/13

kanzan gallery[東京都]

本展に展示されているのは、1960年代後半から70年代初頭にかけての「政治の季節」における路上の光景を撮影した写真群である。作者の風間雅昭によれば、「いわゆる全共闘運動と称される学生を主体とした運動」には三つの側面がある。「学生と学校当局との対立に端を発しそれが全国の大学に波及した運動」、「その運動に外から参加して運動を実質支配しようとしたセクトの運動」、「集団というほどに組織化されていない……「ノンセクトラジカル」と称される人々の運動」である。そのうち「ノンセクトラジカル」の運動は、「政治運動というよりは文化行動という側面」が強いものだった。風間がその「文化運動の側面」に強い共感を抱いていることは、タイトルを「路上の記録」ではなく「路上の記憶」としたことからもわかる。単なる記録ではなく、記憶として共有し、保持し、想起すべき出来事ということだ。

会場には、1968年6月の「60年安保記念」のデモ、69年1月の「東大紛争」、同2月の「日大奪還」、同10月の「国際反戦デー」、1971年4月の「沖縄デー」など、東京の路上で繰り広げられた「闘争」の過程を撮影した写真群が壁にびっしりと貼られていた。その数は300カット余りだが、実際には9000カット以上が撮影されたという。風間は当時Asia Magazines社の特派カメラマンとして取材にあたっていたので、これらの写真は元々報道を目的として撮られたものだ。だが50年の時を隔てて見ると、政治的なバックグラウンドを事細かに読みとるよりも、学生・労働者と警視庁機動隊員の肉体とが激しくぶつかりあう現場のあり方が気になってくる。風間の当時の意図とは違うかも知れないが、これらの写真群は路上に溢れ出し、うねりをともなって広がっていくエネルギーの場を、その細部に目を凝らして撮影したドキュメントといえるのではないだろうか。写真のカット数をさらに増やし、ぜひ写真集にまとめてほしい。

2019/10/02(水)(飯沢耕太郎)

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