artscapeレビュー

シュテファン・バルケンホール展

2019年11月01日号

会期:2019/09/07~2019/10/05

小山登美夫ギャラリー[東京都]

戸谷と同じく木彫ながら、戸谷とは違って具象の人体像をつくるのがドイツの彫刻家、シュテファン・バルケンホールだ。その特徴は、まず1本の木から台座ごと彫られた一木造であること。しばしば上の人物像より台座のほうが大きいこともある。二つめは、彫り跡のささくれを残すなど仕上げが粗いこと。そのため、彼がデビューした80年代にブームだった新表現主義の彫刻家と目された。三つめは、人物像のサイズが等身大より小さいこと。たまに大きいこともあるが、等身大ではない。四つ目は、人物が非個性的で無表情であること。作者はこれを「Mr. Everyman」と呼んでいるそうだ。五つ目は、表面を彩色していること。男性像は白いシャツと黒いズボン、女性像は赤い服という設定になっている。

これらの特徴から、バルケンホールが彫刻の伝統を重視しつつ拡張していることがわかる。また、これが人物彫刻である以前に、文字どおり木を彫った「木彫」であるという主張も伝わってくる。だから主題はだれでも、なんでもよく(ゆえにMr. Everymanなのだ)、極端に言えば人物像はトッピングに過ぎないのだ(もちろんトッピングがいちばん目を引く)。今回は彩色レリーフや、一刀彫のドローイングもあって、「彫刻」概念をどこまでも拡張してくれる。

2019/10/01(火)(村田真)

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