artscapeレビュー

戸谷成雄「視線体」

2019年11月01日号

会期:2019/09/21~2019/10/19

シュウゴアーツ[東京都]

手前のギャラリーには岩石のような彫刻が9点並んでいる。どれも表面がジグザグに切り刻まれ、戸谷がチェーンソウで切り込みを入れた木の固まりであることがわかる。奥のギャラリーには中央に木の立方体が置かれているが、その各面は激しく切り込みを入れられ、かろうじて立方体を保っている。壁には、こうした作業過程で出た数百もの木っ端を斜めに幾条も並べている。この斜めに交差する線条はチェーンソウによる切り込みを表しており、われわれの視線はこうした切り込みに沿って動く。つまり視線は彫刻をなぞるわけで、逆にいえば彫刻は視線の集積によって生み出される。これがタイトルの「視線体」の意味だ。「彫刻」とはなにかを追求し続けてきた戸谷のひとつの答えだろう。

2019/10/01(火)(村田真)

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