2020年10月15日号
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artscapeレビュー

至近距離の宇宙 日本の新進作家 vol.16

2020年02月01日号

会期:2019/11/30~2020/01/26

東京都写真美術館2階展示室[東京都]

毎年、年末から年始にかけて東京都写真美術館で開催されている「日本の新進作家」展も16回目を迎えた。今回は「至近距離の宇宙」というテーマで、藤安淳、井上佐由紀、齋藤陽道、相川勝、濱田祐史、八木良太の6人が出品している。写真表現の歴史において、クローズアップで撮影された写真の登場は大きな意味を持っていた。肉眼で見る世界とは、まったく異なる世界の眺めを捕獲することができるからだ。そこに見えてくる現実世界の姿は、親密さと違和感とを同時に感じさせるのではないだろうか。今回の展示でも、6人の若手写真家たちは、作品制作を通じて、身近なはずの被写体を撮影したときに生じる驚きや不思議さを引き出そうとしていた。

とはいえ、展覧会の前半に並ぶ藤安、井上、齋藤と、後半の相川、濱田、八木の作品の印象はかなり違う。自身も双子の片割れである藤安は、さまざまな双子たちのポートレートを撮影し、井上は生まれたばかりの赤ん坊の瞳にカメラを向ける。聾唖の写真家である齋藤は、世界がみじろぎするその一瞬を捉えようとする。現実世界のあり方をストレートに描写し、「感動」とともに定着させようとする彼らに対して、プロジェクターやタブレット端末の液晶画面の光を光源として制作する相川、山や海のイメージを身近な素材で再構築する濱田、鏡や「驚き盤」などの装置を介した視覚的な変容を扱う八木の作品は、むしろ「近さ」という認識そのものをクールに見直そうとしている。この二つの対照的な作品世界を並置することは、試みとしては面白いが、やや混乱を招いていた。前半部分と後半部分の作品の違いを、もう少し丁寧に浮かび上がらせるべきだったのではないだろうか。

2019/12/18(水)(飯沢耕太郎)

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