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ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター

2020年02月01日号

会期:2020/01/09~2020/03/08

Bunkamura ザ・ミュージアム[東京都]

2017年にBunkamura ザ・ミュージアムで開催された「ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター」展は、観客数が8万人を超えるという、写真展としては異例の大ヒットとなった。それまで日本ではほぼ知られていなかった彼の名前が、大きくクローズアップされるとともに、その写真の魅力が多くの人たちに伝わったのではないかと思う。それから3年、ソール・ライターの展覧会がふたたび同会場で開催された。今回の展示でも、彼の代表作といえる、ニューヨークの日常的な場面を撮影したスナップショットが中心となっている。だが、出品点数が増えただけでなく、初期のモノクローム作品、セルフポートレートや近親者を撮影したポートレートがまとめて展示されるなど、さらにスケールアップした展覧会になっていた。遺された8万点以上というカラーポジから選んだ作品によるスライド・ショーも見応えがあった。

特に注目したのは、妹のデボラと、後半生をともに過ごしたソームズ・バントリーのポートレートのパートである。2歳違いの妹のデボラは、兄のよき理解者だったが、20代で精神を病み、2007年に亡くなるまで施設で過ごすことになる。ライターは彼女の繊細な表情と身振りを、愛情を込めて、壊れ物を扱うように注意深く撮影している。ファッションモデルとして彼の前に登場したソームズは、最高のミューズだった。ライターは彼女の姿を、ときには少女のように、ときには妖艶に、さまざまな視点から撮影した。そこには彼の人間観察力と、写真撮影への飽くなき情熱が見事に発揮されている。

この二つのシリーズが加わることで、やや距離を置いてかすめとるように撮影したニューヨークの情景と、身近な他者に向けた親密な眼差しという、ソール・ライターの二面的な写真の世界が浮かび上がってきた。ソール・ライター財団の献身的な調査にもかかわらず、まだ数万点以上にのぼる未整理作品が残っているのだという。また違った角度から、彼の写真展を見る機会もあるのではないだろうか。

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ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター展|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2017年05月15日号)

2020/01/08(水)(飯沢耕太郎)

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