artscapeレビュー

笹岡啓子「PARK CITY」

2020年02月01日号

会期:2019/12/06~2019/12/26

photographers’ gallery[東京都]

笹岡啓子が「PARK CITY」のシリーズを撮影しはじめたのは2001年、photographers’ galleryで最初に同シリーズを展示したのが2004年だから、すでにかなりの時間が経過している。そのあいだに東日本大震災の被災地を撮影した「Difference 3.11」(2012〜)や海岸線をモチーフに「地続きの海」の景観を探る「SHORELINE」(2015〜)など、いくつかのシリーズを発表しているので、この作品だけに集中してきたわけではない。だが、これだけ長く続くと、その時間の厚みをどのように新作に組み込んでいくかが、大きな課題として浮上してくるのは当然だろう。

笹岡は2009年に写真集『PARK CITY』(インスクリプト)を刊行している。そのときは、6×6判のモノクロームフィルムで撮影した写真を集成していた。それと比較すると、今回の展示ではよりヴァリエーションが増えてきている。カラー写真が中心になり、ネガの状態に色を反転してプリントした作品もあった。笹岡の出身地でもある広島の平和記念公園を中心とした地域を、傍観者的な距離感で撮影していく、被写体の選択の方向性に大きな変化はない。だが、以前の冷静なアプローチとは異質な、どこか感情的な要素を強調した写真が目につくようにも感じた。

このシリーズが、今後どのように展開していくのかはまだよくわからない。笹岡自身にも迷いがあるのではないだろうか。この時期を抜けることで、これまで撮影してきた広島平和記念資料館の展示物の観客たちや、慰霊のために川の周辺に群れ集う人々などの諸要素が、よりくっきりと構造化されてくることを期待したい。なお本作品の一部は、同時期に刊行された『photographers’ gallery press no.14』にも掲載されている。

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