2020年02月15日号
次回3月2日更新予定

artscapeレビュー

増山士郎展覧会「毛を刈ったフタコブラクダのために、そのラクダの毛で鞍を作る」

2020年02月01日号

会期:2019/11/02~2019/12/01

Bギャラリー[東京都]

増山は10年ほど前から北アイルランドを拠点に活動するアーティスト。アイルランドには羊が多いが、かつては羊毛を採るために飼われていた羊も、現在では需要が減って食肉用になっているという。そこで増山は、捨てられてしまう羊毛を刈って昔ながらの技法でセーターを編み、それを裸の羊に着せるというプロジェクトを行なった。刈り取られた毛で編んだセーターを着せられて、羊は喜んだだろうか(たぶん迷惑だったに違いない)。展覧会には刈られる前、刈られた後、そしてセーターを着せられた羊の3点の写真が並んでいる。

次に増山は、羊に似たアルパカのいる南米ペルーに飛ぶ。アルパカが羊と違うのは首が長いこと。そこで増山はアルパカの首周りの毛を刈り、マフラーを編んで首に巻きつけた。これも3点セットの写真で見られる。最後に白羽の矢を立てたのが、タイトルにあるラクダ。ラクダといえば中東のヒトコブラクダが有名だが、ヒトコブは毛が短いので、ロン毛のフタコブを求めてモンゴルへ。ラクダは羊やアルパカとは違って乗り物として機能するので、刈った毛で鞍を制作。増山は実際にその鞍に乗って旅をした。写真の3点セットに加え、旅する映像、実物の鞍も出品し、これが展示のメインとなる。

アイルランドでは廃れてしまった毛織りの技法を復活させ、ペルーでは文明社会から切り離された高地で住人の協力をあおぎ、モンゴルでは遊牧生活をともにしながら自然と一体化できたという。未知の社会に入り込んで住人と協働するアート・プロジェクトでもあるが、やってることは自給自足というか、地産地消というか、一期一会というか、笑止千万というか……。意味を見出そうと思えばいくらでも見出せるが、ここはやはり笑い飛ばすのが礼儀かと。

2019/12/01(日)(村田真)

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