artscapeレビュー
第八次椿会 このあたらしい世界 杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]
2023年12月15日号
会期:2023/10/31~2023/12/24
資生堂ギャラリー[東京都]
グループ展に出すとき、作家には、目立とうとするやつ、普段と変わらないやつ、あえて目立たないようにするやつの3種類がいる。目立とうとするやつは実力より見栄が先走るので、たいていおもしろくない。普段と変わらないやつは逆に作品に自信があり、グループ展などどうでもいいと思っているのでつまらない。やっぱりおもしろいのはあえて目立たないようにするやつだ。目立たない場所に目立たない作品を目立たないように置いて、気づいた人に「なるほど」と納得させる。でも気づかないで帰る人もいるから、イチカバチかの賭けでもあり、そこがまたおもしろい。
「椿会」は戦後、資生堂ギャラリーで始まったグループ展。2021年にスタートした「第八次椿会」のメンバーは、杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]の6組で、毎年テーマを決めて行なってきた。今年のテーマは「放置」と「無関心」。なんじゃそりゃ? グループ展に求められるべき統一性を踏みにじるようなテーマではないか。これはおもしろそうだ。
1階から階段を降りていくと、踊り場にミヤギフトシによる刺繍の作品があり、ふーんと思いながら通り過ぎて振り返ると、その裏にNerholの作品を発見。階段を降りた先には宮永愛子のナフタリンを使った作品があり、その隅っこの壁にもNerholの作品がひっそりと掛かっているではないか。Nerholはほかの出品作家にインタビューするため、それぞれの仕事場を訪れ、そこに生えている帰化植物を撮影し、画像を束ねて切れ込みを入れた作品を、あえて目立たない場所に展示しているのだ。
受付の前の大きな柱を避けてギャラリーに行こうとしたとき、ふと気づく。あれ? こんなとこに柱あったっけ。これは中村竜治の作品。こんなに太いのに、なに食わぬ顔して立っているからすぐには気づかなかった。柱は奥のギャラリーにもう1点、絶妙な位置に立っていて、初めて訪れる人は作品だとは思わないだろう。目立たないけど目立つというか、目立つけど目立たないというか。その柱の陰にもNerholの作品が。
目[mé]は波を立体的に切り取ったような作品を出しているが、もう1点あるはずの作品が見つからない。あっちこっち探した挙句ようやく発見したのは、床に貼られた切手大のポートレート。こりゃ踏んじゃいそうだ。ほかにももちろんフツーの作品もフツーにあったが、記憶に残るのは目立たない(がゆえに目立つ)作品だ。逆にひとりだけ目立とうとするやつがいなかったのは、作家の皆さんのお行儀がいいからなのか、それともギャラリー側の統制が効いているせいなのか。
第八次椿会 このあたらしい世界 杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]:https://gallery.shiseido.com/jp/tsubaki-kai/
2023/11/24(金)(村田真)