artscapeレビュー
麻布台ヒルズギャラリー、パブリックアート
2023年12月15日号
麻布台ヒルズ[東京都]
11月24日にオープンする麻布台ヒルズの内覧会に行ってきた。しばらくのあいだ日本一の高さを誇る森JPタワーをはじめ、建築全体が波打つようなヘザウィック・スタジオのデザインしたガーデンプラザ、ザ・コンランショップなどの店舗が入ったタワープラザなど見どころは多いが、今回はパブリックアートとギャラリーを中心に見てきた。パブリックアートはオラファー・エリアソン、奈良美智、ジャン・ワン、曽根裕の4作家のみ。開発規模の大きさに比べれば寂しいが、1点1点はかなりお金がかかっていそうだ。
まず、JPタワーから中央広場に出る手前の吹き抜けに天井から吊るされているのが、オラファー・エリアソンの《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》というややこしい題名の作品。ぐるぐると曲線を描くように多面体をつなげたものが4点並んでいる。1点の直径は3メートルくらいあるだろうか、これは高そうだ。
広場に出ると、高さ7メートルくらいありそうな奈良美智の《東京の森の子》が立っている。いちばん下に顔があり、頭上に溶けたソフトクリームのような流動体がコーン状に載っている彫刻だが、ここのオリジナルではなく、どっかで見たことがある作品。
表面が鏡面仕立てなのであまり目立たないのが、ジャン・ワンの《Artificial Rock. No.109》。ゴツゴツした岩を模した彫刻で表面をステンレスで覆ったものだが、これも2006年の作品で、2016年の茨城県北芸術祭に出品されたものらしい。もっと目立たないのが、曽根裕の《石器時代最後の夜》と題された大理石の彫刻。広場に数点置かれているが、地にへばりつき、ベンチとしても使えるので見逃してしまいそう。これも2017/2023年となっているので再制作か。よく丸太を組んだ柵をコンクリートで模したフェイクの柵があるが、これは高価な大理石でフェイクをつくったもので、この場所にいちばん合っているような気がする。あとはどこに置いても同じだろ。
麻布台ヒルズギャラリーに行く途中のガーデンプラザのGallery&Restaurant 舞台裏に、加藤泉の彫刻が置かれていた。石の塊を4つ重ねて彩色したものだと思ったら、鋳造して色を塗ったものだという。石だったら床が抜けるところだが、中空の金属でも相当の重さだろう。どうせならこの作品をパブリックアートとして広場に置いたほうが目立つのに。でも麻布台ヒルズはお上品だから、こんなワイルドな作品は置かないだろうね。
いちばん奥まった(神谷町駅からは近い)ところにある麻布台ヒルズギャラリーでは、「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」を開催中。JPタワーにあったややこしいタイトルの作品のヴァリエーションである《呼吸のための空気》(2023)や、有機的なパターンを描くドローイングマシン《終わりなき研究》(2005)などを見て暗い部屋に入ると、幾条もの水流がストロボの点滅により連続した光の粒として感知されるという大作《瞬間の家》(2010)があって、しばし見入る。さて次の部屋は? と思ったらここでおしまい。美術館じゃなくてギャラリーだからこんなもんか。オラファーは作品も言動も優等生的でいけすかないが、こういうコジャレた街にはぴったりなのだろう。
オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期
会期:2023年11月24日(金)~2024年3月31日(日)
会場:麻布台ヒルズギャラリー
(東京都港区虎ノ門 5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザ A MB階)
麻布台ヒルズ パブリックアート:https://www.azabudai-hills.com/art/publicart
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