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東京工芸大学 創立100周年記念展 写真から100年

2023年12月15日号

会期:2023/11/11~2023/12/10

東京都写真美術館地下1階展示室[東京都]

渡辺義雄、大辻清司、田沼武能、細江英公、立木義浩、柳沢信、築地仁、古屋誠一、小林紀晴、本城直季、岡田敦、高木こずえ、新田樹、吉田志穂──ここに並んだ写真家たちの名前を見て、どんな繋がりがあるのだろうと思われた方もいるのではないだろうか。年代も作風もバラバラだが、木村伊兵衛写真賞の受賞作家も含めて、日本の写真表現の歴史に大きな足跡を残した人たちである。実はこれらの写真家たちはすべて、小西寫眞専門学校として1923年に設立され、東京写真専門学校、東京写真大学、そして1975年に東京工芸大学と改称されて現在に至る学校の卒業生なのだ。彼らはまた、創立100周年を期して東京都写真美術館で開催された「写真から100年」展に作品を出品している作家たちでもある。

学校創立から現在までを詳細な年表で辿る「1.工芸ヒストリー」、卒業生たちの代表作を展示する「2.活躍する卒業生」、1977年に設立され、内外の写真の名作を展示、コレクションしてきた「写大ギャラリー」の所蔵作品が並ぶ「3.写大ギャラリーコレクション」、東京工芸大学工学部と芸術学部の共同研究を紹介する「4.次の100年に向かって」の4部構成による展示は、とても充実していた。東京都写真美術館で開催されたということもあるのだが、学内のギャラリーに「写大」という名称が残っているのを見てもわかるように、写真という分野が、東京工芸大学のバックボーンとして今もなお重要な位置を占めていることが伝わってきた。デジタル化やAIの登場により、日本の写真教育のあり方は大きく変わりつつある。東京工芸大学だけでなく、日本大学、大阪芸術大学、九州産業大学などの写真学科も、そろそろその歴史を検証し、未来を志向する展覧会を企画してもいいのではないだろうか。


東京工芸大学 創立100周年記念展 写真から100年:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4589.html

2023/12/02(土)(飯沢耕太郎)

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