artscapeレビュー

高橋良「森─forest─」

2009年02月15日号

会期:1/3~1/18

neutron[京都府]

和紙のような凸凹した生成りのハンガリー製の紙をつなげた大画面。人物や骸骨、動物、夢で見た光景など、さまざまなイメージが描き込まれた作品は「森」なのだそう。紙の独特の質感や、墨、膠、胡粉などの画材の風合いが、幻想的で叙情的な雰囲気をいっそう豊かにしているが、なにより作家の画力に説得力がある。高橋の死生観が織り込まれた「森」の風景は、生々しくもあり、全体的には暗い印象なので一見気が重くなりそうな気もするのだが、じっくりと細部を見ていくと、その混沌世界はすっと気持ちに染み込んできて心地悪いものではない。むしろ、画面のあちこちに視線が吸い寄せられて、目が離せなくなってくるから不思議だ。

2009/01/16(金)(酒井千穂)

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