artscapeレビュー

井上廣子 写真展「Inside-Out」

2009年06月01日号

会期:2009/04/03~2009/04/25

FOIL GALLERY[東京都]

写真家・井上廣子の個展。精神病院や少年院の室内を写した写真を壁面に展示するとともに、写真を載せたライトボックスを床置きにして並べたインスタレーションを発表した。照明を落とした空間に浮かび上がる色彩は鮮やかで幻想的だが、一点一点をよく見ると、人が隔離されている場所に特有のはりつめた空気感が立ち込めている。人体は一切写りこんでいないものの、ベッドの白いシーツには人肌の温もりが残されているように見えるし、廃墟のように剥がれ落ちた壁面は、その部屋の主のどうにもならない内面への求心力の痕跡のようだ。時間が停止したような空間でありながら、そこには生々しい息づかいがたしかに感じられる。しかも、外界との唯一の接点である窓の向こう側が白く霞み、ほとんど見通せないから、写真を見る者はまるで鉄格子の内側に収監されたような錯覚に陥るのである。

2009/04/23(木)(福住廉)

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