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筆墨の美──水墨画展 第一部中国と日本の名品

2009年06月01日号

会期:2009/04/04~2009/05/17

静嘉堂文庫美術館[東京都]

中国と日本の水墨画を紹介する展覧会。日中あわせて40点の水墨画と、筆や硯など14点の文房具が展示された。日本絵画20点のなかに国宝は一点も見当たらないのにたいして、中国絵画20点のうち、国宝が2点(伝馬遠《風雨山水図》、因陀羅《禅機図断簡 智常禅師図》)入っている事実だけを見ても、いかに日本の水墨表現が中国の影響下にあったかがよくわかる。なかでも、日本の水墨画に決定的な影響を与えたとされる牧谿の《羅漢図》は、後の様式化された山水画と見比べてみると、水墨の技法の面でも構図の面でも、明らかに異質であり、この歴然としたちがいを目の当たりにすると、牧谿が長谷川等伯を大いに刺激したという説も頷ける。解説文も要点を押さえた平明な文章で、じつにわかりやすかった。

2009/05/17(日)(福住廉)

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