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幻惑の板橋 近世編

2009年06月01日号

会期:2009/04/04~2009/05/10

板橋区立美術館[東京都]

同館の所蔵作品から近世の美術を見せる展覧会。中身は常設展と大差ないとはいえ、見せ方を工夫しているため、けっこうな見応えがあった。畳を敷き詰めたお座敷に上がると、いくつもの屏風が立っており、来場者は腰を下ろした視点から間近で鑑賞できる。ガラスケース越しに見上げる屏風とはまた一味ちがった趣だ。また二つの展示室には、それぞれ狩野派と民間絵師による作品が分けて展示されているから、双方の質的なちがいを見比べることができた。なかでも、お経の文字だけで坊主を描いた加藤信清の《五百羅漢図》(1791年)が圧巻。輪郭はもちろん、色面まですべて文字で構成されている。果てしない執念とアホクサさが表裏一体であることを如実に物語っていた。

2009/05/03(日)(福住廉)

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