2019年11月15日号
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artscapeレビュー

神村恵カンパニー『385日』

2010年05月01日号

会期:2010/03/25

世田谷美術館[東京都]

世田谷美術館の高い高い天井のエントランスホールが会場。舞台の端には、美術担当の小林耕平による6角形と4角形を組み合わせた木製の構築物が立っている。荷物を背負った神村恵が現われると「そうそうそう……」など誰かに(自分に?)話しかけながら、言葉とは無関係のことを身体はしている。ある瞬間、小さなものを握って、上体を後ろから前へ振り向く、と同時に前向きの上体から残された足下に落とした。声や体やものを不断に交差させて起こる些細なズレ、そのリズム。そうした「こと」が神村の身体の周囲だけではなく、舞台のあちこちで生まれ続ける。ダンサーの福留麻里と捩子ぴじんも荷物を背負って登場。結構強烈なコンタクトで、福留は捩子に押され倒されそうになる。時折、小林が舞台に侵入すると、巨大な紙の塊や前述した構築物や黒板、白い箱を舞台に出したり引っ込めたり位置を変えたりする。また不意に「電車が来るぞ」などと言葉を漏らしもする。小林の映像作品に似て、エントランスホールの空間にあるものすべては、刻一刻と変化するコンポジションを構成するオブジェと化している。ここではすべてがオブジェだ。3人のダンサーたちもしかり。発する声や荒くなる息や衝突の際のふらつきなどはみな、身体なるもののスペックを示す事柄として見えてくる。横並びで笑い顔をつくる場面では、なぜ笑うのかもなぜ笑い顔なのかもわからぬ不安が観客を襲う。タイトルの「385日」の1年を単位とするとちょっと多い日数が謎めいているように、舞台空間はつねに謎めいていて、「魔術的」とでもいってみたくなるような神村のつくる時間と空間(空間に関しては小林の貢献は大きいだろう)にただただ圧倒させられた。

2010/03/25(木)(木村覚)

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