artscapeレビュー

Lady GaGa『The Monster Ball Tour』

2010年05月01日号

会期:2010/04/17~2010/04/18

横浜アリーナ[神奈川県]

まさに「怪物の舞踏会」といった光景。今日の世界的ポップアイコンが見せたのは、美しさでも女らしさでも、若々しさでもなく、といって脱ジェンダーでもなく、ビッチでアグリーなものがもつ解放の可能性だった。現代美術のデータベースからグロテスクで強烈な肉体のイメージを取り出して、ファスト・ファッションみたいにシンプルかつチープに変換して活用する。衣装や楽器、舞台美術、ダンスに、そうした試行が随所に垣間見えた。現代美術だけではない、もっと濃厚に感じられたのはニューヨーク・ローカルのテイストと想像できる、悪趣味で、ぶざまで、キャンピーな、ゲイ的またクイア的イメージ。なかでも、両乳首と股間から3つの火花を激しく噴射させる衣装(「パパラッチ」)には大爆笑させられた。こうした爆笑のもつ解放感がじつに魅力的なライブだった。こうしたアグリーなテイストは、国内において不可思議なほどに、どんどん消極化している昨今だからこそ、このえがたい解放感に日本の観客は酔わされ踊らされたように感じた。

2010/04/18(日)(木村覚)

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