artscapeレビュー

三木義一「フォトジェニック」

2010年07月15日号

会期:2010/06/01~2010/06/13

企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]

三木義一は企画ギャラリー・明るい部屋の創設メンバーの一人。今回の展示は、その真面目な仕事ぶりがよくあらわれた力作だった。会場には28点のモノクロームのポートレートが展示され、以下のような「撮影方法」が掲げられていた。
「暗幕の前にストロボを据え付ける。
他者Aに私の写真を撮ってもらう。
他者Aの写真を撮る。
他者Bに……同様に繰り返す。」
つまり、壁面の片側には三木が撮影した「他者」のポートレートが並び、反対側に「他者」が撮影した三木自身のポートレートが並ぶということだ。その対応関係は、2枚の写真がちょうど正対するように厳密に設定されている。
2つの壁では、やはり「私の写真」の方が圧倒的に面白い。それほど日を置いて撮っているわけではないし、ストロボの発光やモデルの位置もほぼ同じだから、あまり区別がつかない似たような写真がずらりと並ぶことになる。だが、その一枚一枚の微妙なズレが、なんとも居心地の悪い感触を引き出しているのだ。黒っぽく焼きすぎたプリントや、父親の写真だけを他のものとは切り離して並べた会場構成など、これでいいのかと思うこともないわけではないが、こういう試みはやってみないと何が出てくるかわからない。やりきった清々しさを感じることができた。

2010/06/04(金)(飯沢耕太郎)

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