artscapeレビュー

内藤廣『著書解題』

2010年07月15日号

発行所:INAX出版

発行日:2010年6月1日

本書は、『INAX REPORT』において連載された内藤廣の対談をまとめたものである。といっても、建築家が自己表現するような内容ではない。20世紀後半の日本建築の歴史に一石を投じた本をとりあげ、その著者と対談を行なっている。例えば、『空間へ』の磯崎新、『神殿か獄舎か』の長谷川尭、『都市住宅』を編集した植田実、『建築の滅亡』の川添登、あるいは『桂 KATSURA─日本建築における伝統と創造』の写真を撮影した石元泰博らだ。これは勉強になる、とてもいい連載だと思っていた。ちょうど、20世紀の折り返し地点である1950年生まれの内藤だからこそ、建築家として同時代を共有した経験をもとに、著者とともに本とその背景をふりかえりながら、解題を行なう。書物が消えていくとささやかれる情報化の現在、本の力を改めて思い起こさせる好企画だ。したがって、本書には歴史的な資料としての価値がある。巻末の「本と論文にみる現代建築思潮年表」も嬉しい。

2010/06/30(水)(五十嵐太郎)

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