artscapeレビュー

『選択』

2010年07月15日号

発行所:選択出版

発行日:2010年7月1日

1975年に創刊した、完全予約購読による会員制の雑誌。大企業トップや国会議員など、政財界のエグゼクティブを対象にした雑誌であり、各界指導者総数という意味で「三万人のための情報誌」を標榜しているが、実際の発行部数は倍の六万部で「政策決定者に最も大きな影響を与えている雑誌」だという。実際、例えば小泉純一郎は読者であることを公言している。興味深いのは、本音や真実を書くために、また記事の質の高さを確保するために、ほとんどの記事が著者名なしで書かれているところである。他の雑誌とは一線を画した編集方針であり、例えば建築界にはこういう雑誌はないが(ブログではありえるが)、かつて磯崎新、伊藤ていじ、川上秀光らが在学中に八田利也というペンネームで物議をかもす論考を書いていたこと、建築三酔人による『東京現代建築ほめ殺し』が出版されたことなどを思い出した。真に先見的なる媒体の可能性について、考えさせられる雑誌である。なお『選択』2010年7月号には「世界が認め始めた日本人建築家の実力」という建築についての問題定義的な記事が掲載されている。

URL=http://www.sentaku.co.jp/

2010/06/01(火)(松田達)

2010年07月15日号の
artscapeレビュー