artscapeレビュー

第5回カルチベートトーク「ネットワーク行動学から都市デザインへ/建築、土木、都市、交通、景観を横断する可能性」

2010年07月15日号

会期:2010/06/07

建築会館[東京都]

時流にとらわれず、本当に聞きたい話を聞く場をつくろうというところからはじまった、建築学会建築文化事業委員会主催のイベント。5回目のこの回では、交通工学を中心に建築や都市分野でも活躍している羽藤英二氏(東京大学准教授)を招いて、レクチャーとパネルディスカッションが開かれた。羽藤氏は、交通の基本となる「移動」という概念を「伝播」にも拡張させることにより、例えばtwitterから広がるネットワークなどコミュニケーション論も包括した話のなかで、交通から見た都市論を展開させた。そして自動車中心で速度の求められた20世紀型交通から、コミュニティの再編により「遅い交通」が求められる21世紀のモビリティ・クラウド型の交通への転換が説かれた(モビリティ・クラウドは、羽藤氏の造語で、モビリティ・オン・デマンドと呼ぶ研究者もいる)。後半のパネルディスカッションでは、阿部大輔氏(東京大学助教)、武田重昭氏(兵庫県立人と自然の博物館)、筆者が加わり、都市、ランドスケープ、建築という複数の領域の視点から羽藤氏のプレゼンテーションにおける可能性の地平が討議された。「遅い交通」における結節点の重要性から、交通や都市・建築などを包括する全体性の問題へと、スケールを横断しながら討議がなされたことも印象深い。交通という視点から、都市と建築を考えることができた、かなり希少なシンポジウムではなかったかと思う。

2010/06/30(水)(松田達)

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