artscapeレビュー

2014年05月15日号のレビュー/プレビュー

アトリエ・ワン:マイクロ・パブリック・スペース

会期:2014/02/15~2014/05/06

広島市現代美術館[広島県]

広島現代美術館にて、アトリエ・ワンの「マイクロ・パブリック・スペース」展を見る。ホワイトリムジン屋台やマンガ・ポッドなど、彼らが越後妻有や韓国など、国内外の芸術祭などで制作してきた家具以上、建築以下の作品の全員集合と言うべき内容だった。ゆえに最後の部屋の模型群を除いて、基本的に体験できる1/1の空間を出現させている。美術館の吹抜けには、これを使って下階に降りる新作のインスタレーションを挿入する。展示の後半では、世界各地の街と人のふるまい観察も、映像やドローイングなどでまとめて紹介していた。彼らが住宅設計の活動と平行して、小さな公共スペースの可能性を考えてきた軌跡がよくわかる。コレクション展は、幾何学をテーマとしていたが、さまざまな絵画を横一列につなげた展示が興味深かった。ところで、同じ日に名古屋市美と広島現代美を見たのは初めてである。ともに1980年代の黒川紀章の美術館三部作になっているだけに(もうひとつは埼玉県立近代美術館)、共通点と相違点がすぐに比較できる体験だった。

2014/04/26(土)(五十嵐太郎)

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マインドフルネス!──高橋コレクション展 決定版2014

会期:2014/04/12~2014/06/08

名古屋市美術館[愛知県]

名古屋市美の「マインドフルネス!──高橋コレクション展 決定版2014」へ。初見の作品は少なかったが、やはり個人所蔵だけで、これだけの日本現代美術の入門ができるのはすごい。むろん、全体を代表するわけではないが、奈良美智、村上隆、会田誠など、ポップと繊細なテイストをもったある傾向の流れをよく示しており、高橋好みもよくわかる。名古屋ということで、名知聡子、和田典子ら、地元関連の作家も選んでいた。塩保朋子の大がかりな切り絵のようなインスタレーションは吹抜けにうまく収まっていた。

2014/04/26(土)(五十嵐太郎)

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中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス

会期:2014/03/21~2014/05/11

市原市南部エリア[千葉県]

なぜか吉祥寺発のバスツアーに参加。天気もよく、しかもGWの幕開けとあってアクアラインの手前で渋滞、帰りはもっとひどい渋滞に巻き込まれ、結局往復7時間かかった。まず最初に向かったのはダム湖のほとりに立つ市原湖畔美術館。リン・テンミャオは、骨格見本などを組み合わせた作品に市原市内の学校教材を加えてオブジェを制作。アルフレド&イザベル・アキリザンはダム湖に沈んだ村をイメージし、ひっくり返したボートの下に数千もの段ボール製の建物を吊るした作品を展示している。どちらも過疎化で統廃合が進む学校や生徒たちとのコラボレーションを強調している点が、先行する越後妻有や瀬戸内のプロジェクトと被っていて「またか」という感じ。バスのなかから高滝湖に浮かぶ飛行機をながめる。ボートで乗りつけて釣りもできるKOSUGE1-16の作品だが、マレーシア航空機や韓国の旅客船沈没事故が記憶に新しいだけに、タイムリーというかなんというか。
旧里見小学校へ。ここには10組ほどの作品があるが、目を引いたのは、教室をお菓子やそのパッケージで埋め尽くしたり(滝沢達史)、校長室を丸ごとマイナス30度にフリーズしたり(栗林隆)、美術室の壁や天井までびっしりと名画のコピーで埋めたり(豊福亮)、子どものころやりたくてもできなかったタブーを実現させた、いわば「学校への逆襲」ともいうべきプロジェクトだ。弁当を食べながらバスに揺られて小湊鉄道の上総牛久駅に行き、ここから養老渓谷駅までのあいだ列車内で上演する指輪ホテルの演劇『あんなに愛しあったのに──中房総小湊鐵道篇』を見る。小湊鉄道では80年代にサティ弾きの島田璃里さんが列車内にピアノを持ち込んで「演奏旅行」したことがあり、ぼくはそのとき初めて小湊鉄道に乗ったのだが、約30年ぶりに同じ鉄道内でパフォーマンスを見ることになった。演劇自体はともかく、車内照明をつけずにトンネルを走り抜けたり、ドラマに合わせて警笛を鳴らしたり、かなりムチャなことをやっていた。
上総大久保駅で下車し、旧白鳥小学校へ。ここでも複数のアーティストがインスタレーションを見せているが、注目すべきは吉田夏奈の《もぐら》。壁の穴を抜けて暗い階段を昇っていくと穴の開いた天井があり、上まで昇って振り返れば、天井の上面に菜の花畑が描いてある。つまり観客がモグラになって地中を進み、菜の花畑から顔を出すという仕掛けなのだ。菜の花もモグラも市原の名物(?)らしいが、そのふたつの要素を使い、階段という立体構造を生かしながら観客にモグラ気分を体験させ、最後にニヤッとさせる。これはいい。このあと養老渓谷で見た開発好明の《モグラTV》とともに本日のベスト作品賞だ。《モグラTV》は畑に穴を掘って地下スタジオをつくり、ゲストを呼んで生放送を配信するというプロジェクト。会期中作者はモグラの着ぐるみを着て穴のなかで待機し、人がたずねてくると顔を出す。モグラのくせに顔が日焼けしてるのはそのせいだ。モグラというあまり歓迎されない地中動物と地下放送を結びつけ、文字どおりアンダーグラウンドに徹している。
その後、古民家の室内にインスタレーションした大巻伸嗣、月崎駅前の小屋を「森の音」を聞く空間に変えた木村崇人、インドのサンタル族を招いて食を提供する岩田草平らのプロジェクトを鑑賞。大巻のインスタレーションはよくできているけど既視感がぬぐえず、木村と岩田は森やインドの民族に比重が傾いてアートを通り過ぎてしまっている。見終えてひとつ疑問に思ったのは、市原市内には30カ所を超えるゴルフ場がひしめき、グーグルマップで見ると気持ち悪いほど虫食い状態になってるのに、ぼくが見た範囲ではだれもそのことを作品にしてなかったこと。たしかに徒歩や公共交通で移動している限りゴルフ場には気づかないのだが、だからこそだれか目に見えるかたちにしてほしかった。


豊福亮《美術室》



吉田夏奈《もぐら》



開発好明《モグラTV》

2014/04/27(日)(村田真)

大阪市立住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館

[大阪府]

住まいのミュージアム/大阪くらしの今昔館を訪れる。ビルの上階に設けられたミュージアムだが、入ってまずは吹抜けからガラス越しに江戸の街並みを見下ろす。そして降りると、1/1で再現された建物群の中を歩くことができる。その後、いわゆる普通の資料や模型の展示が始まる。ちなみに、来場者が衣装をレンタルし、コスプレを行ない、自らも江戸の街並みの一部になることができる受容の仕方は、現在の東映太秦映画村のようだ。

2014/04/27(日)(五十嵐太郎)

アパートメント・ワンワンワン──中之島1丁目1-1で繰り広げる111日

会期:2014/03/29~2014/07/06

京阪電車なにわ橋駅「アートエリアB1」[大阪府]

京阪なにわ橋駅のアートエリアB1へ。大学とNPOと京阪電車が連携して、商業施設でうめることは難しい駅の一角を社会実験的なアートスペースに使う場所である。1が並ぶ住所の番地にちなみ、アパートメント・ワンワンワン展を開催中だった。公募により、期間中は部屋に見立てたパヴィリオンにおいて展示を行なう作家=入居者が変わる仕組みである。grafとIN/SECTSが管理人となり、ドットアーキテクツも展示のデザインに関与している。

2014/04/27(日)(五十嵐太郎)

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