2024年02月15日号
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artscapeレビュー

2014年05月15日号のレビュー/プレビュー

幸福はぼくを見つけてくれるかな?──石川コレクション(岡山)からの10作家

会期:2014/04/19~2014/06/29

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

入口を入るといきなりスタッフに名前を聞かれたので、答えると「村田さーん」と叫ばれる。一瞬なんなんだと思ったけど、これも作品のひとつと理解する。岡山の石川康晴氏が集めたおもにコンセプチュアルな作品を紹介する展覧会。以下、ペーター・フィッシュリ+ダヴィッド・ヴァイス、ライアン・ガンダー、リアム・ギリック、島袋道浩、小泉明郎らの映像や言葉による作品(らしからぬ作品)が続く。作品そのものに感心するより、こんな作品をコレクションするほうに感心するし、それを発想するアーティストや売りつけるディーラーにも感心する。ほとんどペテン師と紙一重じゃね? 唯一笑えたのは、壁面の中央に眼球と眉毛を埋め込み、観客が近づくとキョロキョロ動くライアン・ガンダーの《マグナス・オパス》(直訳すると「偉大な作品」?)。ちなみに、入口で名前を叫ぶのはピエール・ユイグの《ネーム・アナウンサー》で、鑑賞ガイドには「パフォーマンス:入口に人、指示書」と記載されている。この場合コレクションされているのは「指示書」だけだろう。これなら倉庫も必要ない。

2014/04/26(土)(村田真)

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高柳恵里、松延総司、ほか「line」

会期:2014/04/05~2014/05/02

ハギワラプロジェクツ[東京都]

高柳恵里と松延総司による「線」の展示。ほかは全部忘れたけど唯一覚えてるのは、1本だけ直線であとはへなへなの線が何本か引いてあるだけの高柳のドローイング。こんなのぼくでも描ける、けど描かない、と思ったから覚えてるのだが、それを描いて、しかも十万円を超す値をつけてるのがすごい。もっとすごいのは、それが売れてること。これはぼくにはできない。

2014/04/26(土)(村田真)

森口ゆたか「あしたの光」

会期:2014/04/22~2014/05/04

ギャラリーすずき[京都府]

映像インスタレーション作品。いくつかの蛇口が取り付けられた壁面には青い海、積み上げたトイレットペーパーには車窓に流れていく町並み、展示台の上に積み重ねられた鍋などの調理器具には花火の映像が映し出されていた。作品について詳しく尋ねなかったのだが、淡々と過ぎゆく時を示す映像と、毎日のように触れる道具や消耗品とを併せたそれらの表現は、軽やかながら儚い趣きがあって印象的。美しい作品だった。

2014/04/26(土)(酒井千穂)

夏池風冴「個別のまぼろし」

会期:2014/04/22~2014/04/27

KUNST ARZT[京都府]

切り取ったモノクロ写真の断片を張り合わせ、ひとつの風景として再構成した作品は、実作家自身の実際の記憶を元に再現されたイメージ。あのとき、ここにはあの建物があったはずなのに、ここからはあの看板が見えた気がしたのだけれど。誰にでもあるそのような場所に関する記憶違いや記憶の混同、その無意識からつくり上げられるイメージ。記憶していることと実際に目にしたもの、そのギャップにアプローチする夏池の表現は、一見全体の風景も自然に感じられる。しかし写真の断片(=記憶の断片)の重なり具合、微妙なズレ、色味の違いなど、それぞれの「つなぎ目」に注目してみると、異なる時間や場所にも次々と思いが巡る情感を孕んでいるから惹きつけられる。実在する場所の記録から新たなイメージを生み出す際の、発想の振幅が興味深く印象に残る個展だった。

2014/04/26(土)(酒井千穂)

文藝絶佳──林忠彦、齋藤康一、林義勝、タカオカ邦彦 写真展

会期:2014/04/19~2014/06/29

町田市民文学館ことばらんど[東京都]

林忠彦の『小説のふるさと』(中央公論社、1957)は、彼が1956年に『婦人公論』に連載したシリーズをまとめた写真集だ。12人の小説家の作品を選び、その舞台となった土地を撮影しながら、物語世界を再構築していく。林といえば、戦後すぐの「焼け跡・闇市」の時代を活写した「カストリ時代」の写真群や、太宰治、坂口安吾ら「無頼派」の文士たちのポートレートが有名だが、僕はこの『小説のふるさと』が、彼の写真家としての力量をもっともよく発揮した作品だと思う。
土門拳の「絶対非演出の絶対スナップ」の提唱を真摯に受けとめつつ、それに盲目的に追従することなく、持ち前の演出力と画面構成の能力を充分に発揮したこの作品の魅力を、今回の町田市民文学館ことばらんどの展示でも味わうことができた。残念ながら今回展示されたのは、川端康成「伊豆の踊り子」、三島由紀夫「潮騒」、椎名麟三「美しい女」、志賀直哉「暗夜行路」、石坂洋次郎「若い人」の5作品に取材した写真だけだったので、ぜひシリーズ全体を概観する展覧会を実現してほしいものだ。
なお、林忠彦のほかに、齋藤康一「THE MAN 時代の肖像」、林義勝「観世清河寿の能」、タカオカ邦彦「町田文学散景」の3作品も同時に展示されていた。3人とも林忠彦門下という共通性はあるが、それぞれアプローチは異なっている。齋藤の正統的な「作家のポートレート」、原テキストに遡って能の世界を探求する林義勝の試み、町田を舞台にした現代作家の作品のバックグラウンドを撮影したタカオカの撮りおろしと、見応えのある作品が並んだ。チラシに掲げられた「物語を紡ぐのは小説だけではない」という言葉は本当だと思う。

2014/04/26(土)(飯沢耕太郎)

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