2018年12月01日号
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artscapeレビュー

生きるアート 折元立身

2016年07月15日号

会期:2016/04/29~2016/07/03

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

1980年代から新作まで、270点以上の作品を二つの企画展示室を使って一堂に会した折元立身展。彼のパフォーマー、アーティストとしての軌跡を総ざらいする、圧倒的な迫力の展示だった。
1990年代の代表作である「パン人間」、今年97歳になるという母親との介護の日々を、数々のアート・パフォーマンスとして展開した「アート・ママ」、その発展形といえる「500人のおばあさんとの昼食」(ポルトガル/アレンテージョ・トリエンナーレ、2014)をはじめとする食事のパフォーマンス、日々描き続けられている膨大な量のドローイング、「子ブタを背負う」(2012)など、ユニークな「アニマル・アート」──どの作品にも、生とアートとを直接結びつけようという強い意志がみなぎっており、彼のポジティブなエネルギーの噴出を受け止めることができた。
折元はごく初期から、写真や映像を使ってパフォーマンスを記録し続けてきた。一過性のパフォーマンスをアートとして定着、伝達していくための、不可欠な手段だったのだろう。だがそれ以上に、写真や映像を撮影すること自体が、アーティストとパフォーマンスの参加者とのあいだのコミュニケーションのツールとして、重要な役目を果たしていることに気がつく。カメラを向けられることで、その場に「参加している」という高揚感、一体感が生じてくるからだ。写真や映像を記録のメディアとして使いこなすことで、彼のパフォーマンスは秘儀的な、閉じられた時空間に封じ込められることなく、より風通しのよいオープンなものになっている。写真作品としての高度な完成度を求めるよりも、パフォーマンスの正確な記録に徹することで、はじめて見えてくるものがあるのではないだろうか。現代美術家の「写真使用法」の、ひとつの可能性がそこにあらわれている。

2016/06/03(金)(飯沢耕太郎)

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