2018年01月15日号
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artscapeレビュー

題府基之 何事もない穏やかな日です。

2016年07月15日号

会期:2016/06/07~2016/06/24

ガーディアン・ガーデン[東京都]

題府基之は、東京ビジュアルアーツ専門学校を卒業した2007年に、第29回「ひとつぼ展」写真部門に入選して写真家デビューを果たした。家族との日常生活の断片を至近距離から撮影した写真群は、たしか同校の卒業制作だったはずだ。その後、彼の仕事は日本よりもむしろ欧米諸国で注目を集めるようになる。『Lovesodey』(Little Big Man Books, 2012)、『Project Family』(Dashwood Books, 2013)などの写真集を刊行し、現代日本写真の有力な作り手の一人とみなされるようになった。今回のガーディアン・ガーデンでの展示は、「ひとつぼ展」のグランプリ受賞を逃した写真家たちをフォローする「The Second Stage at GG」シリーズの第42弾として企画されている。
家族の日常スナップを、B全のペーパーに引き伸ばした26点が壁に連なる展示は圧巻であり、以前より明らかにスケールアップしている。だが、それだけではなく、家族一人一人のポートレート、食卓の上の眺め、近所の住宅の光景などを切り取り、圧縮して、再構築していく精度が格段に上がってきているように感じる。一見ラフな撮影の仕方に思えるが、見かけ以上に操作性の強い作品といえるだろう。とはいえ小綺麗にまとめあげるのではなく、ハイテンションを保ち続け、ノイズを排除することなく取り込んでいく力量を感じる。なんともとぼけた響きのタイトルは、住宅関係らしいポスターのロゴから借用している。テレビの画面に映っているのは、どうやらアメリカの大御所写真家のウィリアム・エグルストンのようだ。社会批評として理に落ちる寸前で、視覚的なエンターテインメントに方向をずらしていく綱渡りが、いまのところはうまくいっているのではないだろうか。
とはいえ、そろそろ「家族」の引力から離脱していく時期が近いのではと思う。どんな風に次の「プロジェクト」を展開していくのかが大きな課題になりつつある。なお、展覧会の会期に合わせるように、食卓の光景だけで構成した新しい写真集『STILL LIFE』(Newfave)が刊行されている。

2016/06/15(水)(飯沢耕太郎)

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