2018年09月15日号
次回10月1日更新予定

artscapeレビュー

2016年07月15日号のレビュー/プレビュー

DSA日本空間デザイン賞2016

朝から夕方まで、日本空間デザイン協会(DSA)の空間デザイン賞の審査をオブザーバーとして立ち会う。ディスプレイや展示デザイン、インテリア、イベント、インスタレーションなど、幅広い作品が最終選考に残り、一部の作品は映像資料も提出されていた。世の中にはいろんな賞があるけれど、やはりそれぞれに特徴があって興味深い。また審査の途中で方向性の分岐点となるいくつかの作品をめぐる討議が一番面白い。最後は社会性をもつ作品、前衛的な造形の作品二案が最優秀賞を争った。

2011/06/05(日)(五十嵐太郎)

JCDインターナショナル デザインアワード2016 公開審査

JCDデザインアワードの公開審査をオブザーバーとして見学する。歴代理事が審査員という豪華な顔ぶれだった。数カ月のディスプレイだと審査の対象にならず、1年以上存在していることが条件らしい。ファイナルの3作品は建築家によるもので、ゼロ年代以降の傾向が続いている。DSAの審査と同様、最後は社会・時代か、造形力かの択一の勝負となり、ここでも前者が選ばれた。中村拓志によるか細い柱で大きな屋根を支える構造のレストランは建築的にすごかったが、谷尻誠による本棚のある宿泊施設、《BOOK AND BED》が勝利した。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

やなぎみわステージトレーラープロジェクト「日輪の翼」

会期:2016/06/24~2016/06/26

横浜赤レンガ倉庫イベント広場[神奈川県]

屋外ゆえに、風の状態にハラハラしながらの観劇となった。強風による中止とはならなかったものの、残念ながら完全版での演出でもなかった。もっとも、各地を巡回してきた、ど派手な変形トレーラー、御柱=ポール、ライブ演奏が、中上健次の聖と俗の世界を彩る。ただ、多くいる俳優の声をマイクで拾いスピーカーで流すため、発話者の位置がすぐにわかりにくいのが気になった。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

荒木経惟「センチメンタルな旅─コンプリート・コンタクトシート」

会期:2016/05/25~2016/07/23

IMA gallery[東京都]

1971年に限定1,000部の私家版として世に出た荒木経惟の写真集『センチメンタルな旅』。陽子夫人との新婚旅行の一部始終を捉えたこの“幻の写真集”のコンタクトシート全18枚、653カットを公開している。関西、九州方面だろうか、行く先々の風景に、電車のなか、ホテルや旅館の部屋、ベッドや布団の上にもカメラを向け、妻はときにヌードで、ときに行為中の淫らな姿も見せている。この写真集で印象的なことのひとつは、陽子夫人がずーっと無表情というか、むしろ不機嫌そうな顔しか見せていないこと。いくらなんでも新婚旅行で笑顔ひとつ見せないのは不自然なので、きっと笑顔の写真はカットされたんだろうと思っていたが、ざっと見たところ笑顔はほとんどなかった。だとすれば、本当に笑顔を見せなかったか、笑顔は見せたけど撮らなかった(撮らせなかった)かのどちらかだ。どっちにしろ不自然だが、この不自然さは新婚旅行中ふたりが「新婚旅行」を演じていたからかもしれない。劇場型犯罪ならぬ劇場型写真。これが「劇写」ってやつか?

2016/06/01(水)(村田真)

荒木経惟「センチメンタルな旅─コンプリート・コンタクトシート」

会期:2016/05/25~2016/07/23

IMA gallery[東京都]

荒木経惟は1971年7月7日に、広告代理店・電通の同僚だった青木陽子と結婚式を挙げ、京都と福岡県柳川への4泊5日の新婚旅行に出発した。そのあいだに撮られた写真108枚を構成して、1000部限定の自費出版で刊行したのが『センチメンタルな旅』であり、荒木の実質的なデビュー作品集になる。日本の写真表現の歴史におけるこの写真集の重要性については、すでに語り尽くされているといってもよい。だが、今回東京・六本木のIMA galleryで開催された、「センチメンタルな旅」のコンタクトシート(ネガの密着プリント)の全点展示を見て、あらためてその凄みに震撼させられた。荒木は新婚旅行のあいだに35ミリのモノクロームフィルム17本を撮影し、さらに東京に帰ってから撮影した1本分のネガを合わせて写真集を構成しているのだが、その作業全体に神の手が及んでいるのかと思えるほどの奇跡的な出来栄えなのだ。
18本分のコンタクトシートを辿っていくと、荒木はあらかじめ周到に写真集全体の構成を考えてから撮影したように見えてくる。だがそうではないだろう。一見シナリオに沿って展開しているようだが、次に何が起こるのか、荒木がそして陽子がどう動くのかは、成り行きまかせだったのではないだろうか。とはいえ、全身全霊をアンテナとして次の展開に備えているような緊張感が全編に漂っており、写真家とモデルとのテンションの高さはただ事ではない。さらに、コンタクトシートによって、はじめて見えてきたこともある。例えば、あのよく知られた「死の舟」のカットの前後には、5カット分シャッターが切られており、舟の中に横たわっていた陽子は、その後身を起こして荒木のほうを見つめているのだ。そう考えると、どのカットを選択しどのカットを落とすのか、また、それらの写真の前後を微妙に入れ替えながらどう並べるのかで、そのシリーズ見え方がまったく違ってくることがよくわかる。そのデリケートな作業を、荒木がほぼ完璧に成し遂げていることが、コンタクトシートからありありと見えてくるのだ。
なお、ほぼ同時期に、1階下のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでは「写狂老人A 76齢」展(5月25日~6月29日)が開催された。恒例の荒木の誕生日記念展だが、こちらのテンションの高さも特筆に値する。2002年以来撮り続けているKaoRiを6×7判カメラで撮影したカラー作品「写狂老人A 76齢」から9点と、パリのギメ東洋美術館の個展のために撮り下ろされた「トンボー・トウキョー」シリーズから471点(スイッチ・パブリッシングから同名の写真集も刊行)。衰えを知らないエネルギーの噴出には、驚きを通り越して唖然としてしまうほどだ。

2016/06/01(水)(飯沢耕太郎)

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