artscapeレビュー

塩賀史子 展「彼方の庭」

2010年07月15日号

会期:2010/06/08~2010/06/20

neutron kyoto[京都府]

身近な森や植物など、日常的に訪れる場所や、日頃目にしている光景の一瞬をまるで写し取るかのように描きだす塩賀史子の個展。今年2月に東京で開催された同名の個展と同じコンセプトなのだが、今展で展示された作品はすべて新たに制作されたものだという。木々の隙間を通り抜ける木漏れ日のやわらかな表情と地面に揺れる影の濃淡、椿や蓮の葉に照りつける眩いほどの光など、その描写力にはやはり目が釘付けになってしまう。刻一刻と流れていく時間のなかで、絶えず流転し変化していく世界の果敢ない美しさを、空気や湿度の感触も含めてまるごととらえ、表現しようとする塩賀の制作の姿勢はまるで厳しい職人の修行のようにさえ思える。じっくり見ていると以前の作品の印象とも少し違うことに気がついた。ある風景の中の一場面というよりも、椿や蓮の葉などひとつの植物にクローズアップしたものが多かったせいだろうか。光の反射が強烈なありさまをじっと見ていたら、真夏の射すような暑さとジトッとした空気の匂いまで思い出した。

2010/06/12(土)(酒井千穂)

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