artscapeレビュー
ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年
2012年07月15日号
会期:2012/06/13~2012/09/17
国立西洋美術館[東京都]
ベルリン国立美術館といっても、そういう美術館がドーンと建ってるわけではない。ベルリン市内に点在する15の国立美術館・博物館の総称なのだ。今回はそのうち絵画館、素描版画館、ボーデ博物館の3館からの100余点を紹介。サブタイトルは「学べるヨーロッパ美術の400年」。現在開催中のエルミタージュ美術館展が「世紀の顔・西欧絵画の400年」、秋に開催予定のメトロポリタン美術館展が「大地、海、空──4000年の美への旅」だから、400年とか4000年という時間は美術史的にまとめやすいのかも。美術史4万年ともいうし。同展は15~18世紀の近世に絞り、彫刻や素描も展示している。こういう大型展での彫刻や素描はつけたし程度のものが多いので普段はちゃんと見ないが、今回は違った。彫刻はロッビア一族の彩釉テラコッタ、ドナテッロ工房の大理石レリーフ、リーメンシュナイダーら北方の繊細な木彫など、近世以降衰退していく限界芸術的な彫刻が多く、いとおしささえ感じられた。素描も必見で、ドッジョーノやギルランダイオの衣紋、シニョレッリやベッカフーミの人体などは、ある意味で絵画以上の魅力がある。でもやっぱりメインは油彩画。目力(めぢから)がすごいデューラーの肖像画、色が褪せて主題がなんだかわからなくなったルーベンスの風景画、巨匠にもヘタクソな時代があったんだと安心するベラスケスの初期作品、本物よりレンブラントらしいレンブラント派の《黄金の兜の男》、画中画の金の額縁と実物の金の額縁がハレーションを起こすコルネリウス・ビショップ帰属の室内画など、見どころは少なくない。そのなかでもクライマックスともいうべき位置にあるのが、フェルメールの《真珠の首飾りの少女》だ。似たような《真珠の耳飾りの少女》(は都美術館ね)に比べて知名度は低いけど、これもなかなかの問題作。テーブルの描き方が遠近法的におかしいとか、左上の鏡の位置が高すぎるとか、その鏡の横の窓枠の上に卵が置かれているとか、いろんな説があるが、いちばんびっくりしたのはテーブルの下にエアコンみたいなものが隠れていること。画集だと真っ黒につぶれてよくわからないけど、これなに?
2012/06/12(火)(村田真)