artscapeレビュー

沖縄のコンクリート建築

2012年07月15日号

[沖縄県]

初日は、琉球大学の入江徹研究室の4年生ゼミ課題の講評を行なう。今年のテーマは、行為の解体。毎年同じ大学を訪れていると、自分の研究室の学生でもないのに、なんとなくメンバーの動向を覚えてしまうのが興味深い。2日目は、琉球大学でレクチャーの後、1階からいきなりほとんど空き店舗になった衝撃の大型商業施設コリンザ、コンクリート造のアーケードをつなげたパークアベニュー通り、そしてゲート通り周辺の沖縄的なコンクリート建築群を見学する。夕方からアメリカ兵が集まるバーやクラブをはしごし、ちょっとだけ日本にはない『コヨーテ・アグリー』の世界を体験した。
しばしば沖縄の記号として赤瓦が使われるが、象設計集団の《名護市庁舎》(1981)など、一部の事例をのぞくと、お手軽で安易な手法になっている感は否めない。一方で沖縄建築のもうひとつの特徴は、コンクリートの使用である。実際、木造の家がほとんどない。アメリカ軍の建築の影響を受けつつ、台風やシロアリの被害を避けるべく、住宅さえも鉄筋コンクリート造である。前述したパークアベニュー通りからゲート通り周辺で観察すると、窓のルーバーや垂れ壁など、普通は別の素材でつくるような細かな造作にも、好んでコンクリートを使う。現在、保存問題が起きている《久茂地公民館》(1966)も、こうした文脈から評価されるべきだ。設計者の宮里栄一が、東京のモダニズムを参考にしつつも、沖縄らしいコンクリートの造形を展開したデザインなのである。

写真:上=入江徹がデザインした琉球大学の講評会の会場、中=中央パークアベニュー、下=ゲート通り周辺

2012/06/16(土)・17(日)(五十嵐太郎)

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