artscapeレビュー

室井公美子「Opposite bank」

2012年07月15日号

会期:2012/05/26~2012/06/23

ギャラリーモモ両国[東京都]

今日は立て続けに2本、いかにもペインティングらしいペインティングを見た。まずは室井公美子。室井の絵画を特徴づけるのは紫がかったグレーの色彩と、絵具が画面を流動するような筆触だが、それ以外の要素、たとえば形態や構築性や地と図の関係などは、今回の約30点の新作のなかでも、また過去の作品のファイルを見ても、あったりなかったり、または行ったり来たりして安定しない印象だ。会場でもらったペーパーには「“狭間”に私は惹かれる」とか「画面とコンタクトを取るように流動的に進めてゆく」とか「矛盾を抱え謎を孕んだものを作りたい」といったことが書かれているが、おそらく作者は最終地点を設定せずに、さまざまな“狭間”を行き来しつつ矛盾を抱え込んだまま、いつのまにか着地しているのかもしれない。それでも、だれが見ても室井の絵だとわかるところが室井の室井たるゆえんだ。

2012/06/14(木)(村田真)

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