artscapeレビュー
北川雅光 展
2012年07月15日号
会期:2012/06/12~2012/06/17
アートスペース虹[京都府]
自宅付近の空き地や庭などに群生する「雑草」をモチーフにした絵画作品を発表してきた北川雅光。日頃、気に留めることなどほとんどない身近な植物を丁寧に観察し、それぞれの葉が密集し生茂る様子を丹念に描き出したその作品は、これまでもおもに線描で表現され、図と地を分ける色や鮮やかな色彩などはほとんど使われていなかった。しかし今展には、赤い色面によって植物の輪郭をさらに際立たせる作品も並んでいていままでとは異なる雰囲気。画面全体には、これまでのように、密集する線から個々の(植物の)輪郭を探しだすような平坦な印象はなく、線が背景と図をはっきりと分けている。そのため植物の繁茂する様子もいっそう力強く、空間的な奥行きも感じられるのだが、ある作品には「雑草」の茂る風景のなかに無造作に転がったオブジェのような小さなモチーフも隠れていた。これが密やかで愉快。空間性に物語を喚起する時間性が加わり、見ていると想像も膨らむ。踏まれたり、雨風でなぎ倒されたりしながら生い茂る身近な植物への慈しみやその力強さを見つめる北川の眼差しもより感じられて新鮮だった。
2012/06/16(土)(酒井千穂)