artscapeレビュー
タムトリ展「未来ちゃんの未来」
2012年07月15日号
会期:2012/06/01~2012/06/24
blind gallery[東京都]
なかなか面白いアイディアの企画展だ。昨年出版されて、写真集としては異例の大ヒットになった川島小鳥の『未来ちゃん』(ナナロク社)。そこに掲載されている佐渡島在住の女の子「未来ちゃん」の写真に触発されて、タイ・バンコク在住の漫画家、アニメーター、タムくんことウィスットポンニミットが、イラストを書き下ろした。タムくんの原画と、その発想の元になった川島の写真を並べて展示してある。
写真と漫画という組み合わせが、ありそうであまりないことに加えて、二人の作品の関係が絶妙で、見ていてとても楽しい。写真の場面をそのまま再現するのではなく、「未来ちゃん」は少し成長して少女になり、SF的な設定の下にいろいろな冒険を繰り広げる。タムくんの、のんびり、ほんわかとした画風が、川島の写真の世界をうまく引き継いで増幅させている。こういう企画は、もっと続いていくといいと思う。つまり、今度は川島が「未来ちゃんの未来」の姿を撮影して、タムくんのイラストをさらに発展させていくのだ。
また、他の写真家と漫画家同士の組み合わせというのも考えられそうだ。たとえば、荒木経惟の『センチメンタルな旅』や『愛しのチロ』だったら、漫画家は誰がいいだろうかなどとつい考えてしまった。
2012/06/02(土)(飯沢耕太郎)