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マウリッツハイス美術館展──オランダ・フランドル絵画の至宝

2012年07月15日号

会期:2012/06/30~2012/09/17

東京都美術館[東京都]

オランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館は、規模こそ小さいけれど、アムステルダムの国立美術館と並んで黄金時代と呼ばれる17世紀オランダ絵画の宝庫。今回は美術館の拡張工事で長期休館するため、コレクションの一部が貸し出されることになった。展示は6章に分かれ、第1章はマウリッツハイスゆかりの人たちや建物を描いた自己言及的な「美術館の歴史」。なかでもレンブラントの《ニコラース・テュルプ博士の解剖学講義》が飾られた展示室を描いたアントーン・フランソワ・ヘイリヘルスの作品は、画中画愛好家には垂涎もの。なんでこの絵の複製画や絵葉書が売ってないの? 第2章が「風景画」で、第3章はルーベンスやレンブラントらの「歴史画」。歴史画なのにどれも小さいのが残念だが、ルーベンスの場合小さい(つまり下絵)がゆえに本人の真筆であることが間違いないので、むしろ弟子に描かせた大味な大作より貴重だ。「歴史画」の最後はフェルメールの《ディアナとニンフたち》で、階上の第4章「肖像画と『トローニー』」につながっていく。エスカレータで上ると大きな展示室の奥にただ1点、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》が置かれている。さっそく単眼鏡を取り出してつぶさに観察してみると、お肌が妙にスベスベで現実味に欠けていて、これはやはり特定のモデルを描いたのではないトローニーに違いない。この章にはほかにもヴァン・ダイクによる裕福な夫妻を描いた対の肖像画、フランス・ハルスの闊達な筆さばきによる少年像、レンブラントの初期と晩年の自画像を含む肖像画もあって、密度が濃い。第5、6章はいかにもオランダ絵画らしい「静物画」と「風俗画」が続き、けっこう満腹になった。なのに《真珠の耳飾りの少女》ばかりが話題になって、もったいない。

2012/06/29(金)(村田真)

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