artscapeレビュー
「JCDデザインアワード2012」公開審査
2012年07月15日号
東京デザインセンターガレリアホール[東京都]
東京デザインセンターにて、JCDデザインアワード2011の審査を担当した。今年の特徴は、アジアから力強い造形をもつ作品がかたまりになって応募されたこと。個人的には一押しがなく、最後に残った金賞の6作品もあまり予想しなかった展開だった。ファイナルの審査で議論になったのは、主に以下の3作品である。藤井信介の「鎌倉萩原精肉店」は、店主の顔がいい。これも含めてインテリア・デザインがなされている。建築的には、新しい空間の形式を大胆に提案しているという点において、HAP+米澤隆の「公文式という建築」が評価できるだろう。一方、宇賀亮介の「まちの保育園」の応募パネルは、スナップ写真を多く貼り、建築のデザインよりも、人々のアクティビティを伝えようとしていた。即決で結果を出すなら、精肉店か公文式だろう。が、議論が長引くに連れて、だんだんと保育園のおもしろさがわかってくる。噛めば噛むほど味がでるのだ。まちとつなぐための建築の構成にも提案がある。写真一発のデザインではない。だが、デザインが社会に対してできることへの可能性を切り開く。このことが審査員のあいだで共有されたとき、僅差で「まちの保育園」が大賞に選ばれることになった。
2012/06/23(土)(五十嵐太郎)