artscapeレビュー
吉岡千尋 展「skannata」
2012年07月15日号
会期:2012/06/16~2012/07/08
アートコートギャラリー[大阪府]
金属粉や顔料を用い、丹念に色を塗り込んだ下地の上に植物や動物、風景などを描いた画面は、よく見るとどれにもうっすらとグリッドが引かれているのがわかる。近年から吉岡は、このようなグリッドを画面に構成した作品の制作を行なっているのだが、今展には、小さな画面に描いた作品と、そのスケールを大きく展開して描いた作品が並んでいた。二つの趣きを楽しめるのもさることながら、描かれた対象の物質感や遠近感などを保つグリッドの緊張感と、筆致や深い色の層がうみ出す物語性のバランスが微妙で、全体にはかなげな、というよりも頼りないガラス細工のような印象のものが多い。それがとても魅力的。
2012/06/30(土)(酒井千穂)