artscapeレビュー

澄毅「空に泳ぐ」

2012年07月15日号

会期:2012/06/18~2012/06/23

Port Gallery T[大阪府]

大阪市西区京町堀のPort Gallery Tでは、2012年5月~6月に若手写真家5人の連続展が開催された、やまもとひさよ、田村智子、宇山聡範、小川美緒と続いた最後に登場したのが、澄毅(すみ・たけし)である。
澄は1981年、京都生まれ。2008年に写真ひとつぼ展で入選、2009年と2010年には写真新世紀展で佳作に入っている。昨年同じギャラリーで開催された個展「光」を見て、ユニークな思考力を備えた写真家だと思った。今回の展示は、その続編というべきもので、虫ピンで小さい穴を穿ったプリントを太陽にかざし、そのままカメラで複写するという手法でつくられた作品が並んでいる。一見フォトショップで加工したようだが、その無数の穴を通ってきた光は、光としてのかなり生々しい物質性を感じさせる。写真の画像の中に異なった次元が導入されることで生じた「空白」を、写真を見る者は自らの記憶や願望で埋めようとする。虫ピンで穴を穿つ澄の行為と見る者の思いとが、光の「空白」を通じて交流することがもくろまれているのだ。
昨年の個展では、祖父母や自分自身が写っている家族写真が中心だったが、今回は東京で撮影した路上のスナップのプリントにも穴をあけている。そのことによって、光が侵入する範囲が、個人的な記憶から集合的な都市の記憶まで拡大してきた。彼の意図がより的確に表現されるようになってきたのではないだろうか。ただ「見せ方」のレベルでいうと、最終的なかたちがまだ完全に定まっているとは言えない。プリントを太陽にかざすという行為の痕跡が、もっとストレートに見えていいと思うし、展示作品の大きさ、プリントのクオリティも、まだこれでいいのかという疑問を感じる。フィニッシュワークに、さらに磨きをかけていく必要があるだろう。

2012/06/22(金)(飯沢耕太郎)

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