artscapeレビュー

岡上淑子『はるかな旅』作品集出版記念展

2015年06月15日号

会期:2015/04/25~2015/06/14

LIBRAIRIE6[東京都]

1953年に瀧口修造の推薦で、タケミヤ画廊で個展を開催してデビューし、57年の結婚を期に活動を停止するまで、まさに彗星のようにアート界を駆け抜けた岡上淑子のフォト・コラージュ作品に対する評価は、このところ再び高まりつつあるようだ。今回、河出書房新社から刊行された、決定版と行ってよい作品集『はるかな旅』には、自選作品77点の他に、全作品のリストがおさめられている。
その作品集の出版にあわせて、東京・恵比寿のLIBRAIRIE6では、オリジナル作品9点、2014年制作のシルクスクリーンによる複製9点による展覧会が実現した。あらためて岡上の作品を見ると、彼女の仕事が「シュルレアリスムの作家」というこれまでの評価から、ややはみ出したものだったのではないかと思えてくる。たしかに、技法的にはマックス・エルンストらのフォト・コラージュの系譜に位置づけられるのは間違いないが、『ヴォーグ』や『ハーパーズ・バザー』誌のファッションページから、写真を鋏で切り取っては糊で貼り付けていく手つきは、アーティストのそれというよりは少女の着せ替え人形遊びを思わせるのだ。フロイトの精神分析理論の翳りなどかけらもない、あっけらかんとしたイノセントな明るさが、彼女の作品にはいつも漂っている。
今回の展示で注目されるのは、唯一フォト・コラージュではなく多重露光の技法で制作された「女」(1955年)である。彼女自身、この時期に新たな展開をめざしていたように見えるのだが、残念なことにその作業は中断してしまった。名古屋のシュルレアリスト、山本悍右などの仕事にも通じるこの時期の作品についても、きちんと見直していくべき時期に来ているのではないだろうか。

2015/05/15(金)(飯沢耕太郎)

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