artscapeレビュー
百々武「海流」
2015年06月15日号
会期:2015/05/20~2015/05/29
コニカミノルタプラザギャラリーC[東京都]
百々武は、2015年3月に赤々舎から写真集『草葉の陰で眠る獣』を刊行し、銀座ニコンサロンと大阪ニコンサロンで同名の個展を開催した。東京写真月間の特集「『島』 島は日本の原点」の一環として、コニカミノルタプラザギャラリーCで開催された個展「海流」はそれに続くもので、このところの彼の仕事の充実ぶりが伝わってくるものだった。
百々は2003年に訪れた鹿児島県の屋久島と種子島で、船で1時間ほどの近さなのにまったく異なる環境であることに驚き、「島」を基点にして日本列島をあらためて見直すというアイディアを思いつく。日本最南端の与那国島から北海道の利尻島、礼文島まで精力的に回って、2009年には写真集『島の力』(ブレーンセンター)を刊行した。だが、それ以後も「島」の撮影は続いている。今回の個展には、2003年3月撮影の屋久島から2014年12月撮影の大神島(沖縄県)まで、未発表の43点が並んでいた。
風景、人、モノを柔らかな眼差しで捉え、画面に配置していく百々のカメラワークは自然体で無理がない。豊かな諧調のモノクロームのプリントを見ていると、ゆったりとした空気感に包み込まれる。体内にしまい込まれていた懐かしい記憶に血が通って、少しずつうごめき出すような気がしてくるのだ。ただ、「島」はたしかにいいコンセプトだが、そろそろまとめ方を考えていく時期に来ているのかもしれない。単純に南から北へと写真を並べるだけではなく、それぞれの「島」の共通性と異質性を抽出し、新たな解釈でグルーピングしていく手続きが求められているのではないだろうか。
2015/05/26(火)(飯沢耕太郎)