artscapeレビュー
Prix Pictet ─ Consumption
2015年11月15日号
会期:2015/10/03~2015/10/18
BA-TSU ART GALLERY[東京都]
Prix Pictetは、スイスの投資会社Pictet社が、2008年から主催している国際的な写真賞。環境問題とサステイナビリティを大きな柱として、「Water/水」「Earth/地球」「Growth/成長」「Power/力」「Consumption/消費」というテーマで受賞者を選んできた。2014年におこなわれた第5回目の「Consumption/消費」の審査には、66カ国の275名のノミネーターが推薦した700人以上の写真家が参加し、南條史生(森美術館館長)を含む8人の審査員が最終候補者を決定した。アダム・バルトス(アメリカ)、題府基之(日本)、リネケ・ダイクストラ(オランダ)、ホン・ハオ(中国)、ミシュカ・ヘナー(イギリス)、フアン・フェルナンド・エラン(コロンビア)、ボリス・ミハイロフ(ウクライナ)、アブラハム・オホバセ(ナイジェリア)、ミハエル・シュミット(ドイツ)、アラン・セクーラ(アメリカ)、ローリー・シモンズ(アメリカ)の11名である。東京・原宿のBA-TSU ART GALLERYでの今回の展示は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館で開催された展覧会を縮小した巡回展である。
驚くべきことは、「食品」シリーズでグランプリを受賞したシュミットをはじめとして、最終候補者にダイクストラ、ミハイロフ、セクーラ、シモンズといった写真界の“ビッグネーム”が顔を揃えていることだ。彼らと題府基之やホン・ハオのような、若手の写真家たちが競い合う賞はなかなかないだろう。テーマ設定にも、「特に環境問題に世界の関心を向ける」という意図が貫かれており、ドキュメントとアートを融合するという方向性も明確である。第6回目のテーマは「Disorder/混乱」だが、今回からこれまでノミネートされた日本人のうち40歳以下の写真家を対象とする「Japan Award」も設けられ、南條史生、鈴木理策、笠原美智子、飯沢耕太郎の審査により、中国揚子江流域の「死体回収業者」をテーマとした菊池智子の「The River(河)」が同賞を受賞した。もっと注目されてよい企画だと思う。次年度以降の「Japan Award」の審査も楽しみだ。
2015/10/13(火)(飯沢耕太郎)