artscapeレビュー
ルイス・ボルツ「Sites of Technology」
2015年11月15日号
会期:2015/09/12~2015/10/17
WAKO WORKS OF ART[東京都]
ルイス・ボルツ(1945~2014年)はアメリカ・カリフォルニア州ニューポート生まれ。1975年に、ベッヒャー夫妻、ロバート・アダムス、ニコラス・ニクソン、スティーブン・ショアらとジョージ・イーストマンハウス国際写真美術館で開催された「ニュー・トポグラフィクス」展に参加し、風景を「地勢学的に」厳密に探究、撮影していく流れの先駆者の一人となった。「The New Industrial Parks near Irvine, California」(1974)、「Nevada」(1977)、「San Quentin Point」(1981-83)といった写真シリーズは、日本の同世代の写真家たちにも強い影響を及ぼしている。だが、パリに移住した1990年代以降、モノクローム写真を、相互の関係性を考慮しながら配置していくスタイルから離れて、「Ronde de Nuit」(1992/95)のような大判のカラープリント使用したインスタレーション的な展示を試みるようになる。
そのことは、彼の以前からの観客にやや戸惑いを与えることになるのだが、今回WAKO WORKS OF ARTで1980年代の代表作の一つ「Near Reno」(1986-87)トともに展示された「Sites of Technology」(1989-91)のシリーズを見て、その変化が必然的なものだったことがよくわかった。ボルツや「ニュー・トポグラフィクス」の作家たちは、70~80年代の都市化、工業化による景観の変容に対応していったのだが、90年代にはそれが可視的なものから不可視の領域にまで達しはじめていたのだ。テクノロジーが急速にデジタル化してくることによって出現してくる眺めは、従来の写真撮影のやり方では捉えることができない。ボルツはカラー写真を使いはじめ、インスタレーション的な手法を模索するようになる。その過渡期に制作された「Sites of Technology」のシリーズは、時代の切断面に鋭敏に反応した、いかにもボルツらしいクオリティの高い作品に仕上がっており、より若い世代(たとえば畠山直哉、伊奈英次など)の写真表現を先取りするものとなっている。
2015/10/17(土)(飯沢耕太郎)