artscapeレビュー
藤本由紀夫 Broom(Coal)/Tokyo
2016年03月15日号
会期:2016/02/06~2016/03/06
シュウゴアーツ ウィークエンドギャラリー[東京都]
ギャラリーいっぱいに黒い石が円環状に敷かれている。石は黒光りしているので石炭とわかる。一瞬リチャード・ロングを想起したが、上を歩いてもいいというのでジャリジャリいわせながら歩いてみる。円環に沿って歩いているうちに、あ、これはレコード盤だと気がつき、自分がレコード針になった気分。「Broom(ほうき)」と題されたこの作品、最初は床に枯れ葉を敷きつめるインスタレーションから始まり(最初に発表した会場が「room B」だったので「Broom」になったとか)、次第に素材や形態を変えながら石炭のレコード盤になったという。考えてみれば石炭はレコード針に使われるダイヤモンドと同じ元素だ。横のテーブル上にはオルゴールを使った小品がいくつかあって、歯が全部そろってる手巻きオルゴールがひとつ、あとは歯が1本しかないもの、ぜんぜんないものなど。さすがに歯が1本だけではなんの音楽かわからない。また、箱のなかにオルゴールが二つ入っていて、ひとつは右から1、3、5……という奇数番目の歯、もうひとつは2、4、6……という偶数番目の歯しかない。同時に鳴らしても同調しないが、なんの曲かはなんとなくわかる。オルゴールひとつでこれだけ遊べるとは。
2016/02/13(土)(村田真)