artscapeレビュー
試写『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
2016年03月15日号
2013年10月、ストリートアーティストのバンクシーがニューヨークの路上で毎日1点ずつ作品を公開した。その“狂乱”の1カ月を追ったドキュメンタリー。狂乱というのはこの映画を見る限り大げさではない。作品の場所は明かさず公式サイトに投稿するだけなので、人々はそれを頼りにニューヨーク中を探しまわるしかない。その作品はグラフィティあり、スフィンクスの彫刻あり、家畜のぬいぐるみを乗せたトラックあり(肉屋の前で停まる)、売り絵の露天商あり(バンクシー自身の絵がたった60ドルで売られているが、だれも気づかない)、ショーウィンドウの絵に加筆したものありと予想がつかない。しかもそれを見に行ったり写真に撮ったりするだけでなく、消すヤツ、復元するヤツ、上書きするヤツ、盗むヤツ、転売するヤツ、ボール紙で隠して金を取って見せるヤツ、金を払って見るヤツ……と反応も千差万別、もうお祭り騒ぎなのだ。でもそれもバンクシーにとっては想定内。人々が右往左往する狂乱ぶりもバンクシーのストリートアートの一部なのだ。
2016/02/18(木)(村田真)