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ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜

2018年04月15日号

会期:2018/01/23~2018/04/01

東京都美術館[東京都]

昨年から「ブリューゲル『バベルの塔』展」「ベルギー奇想の系譜」「ルドルフ2世の驚異の世界展」と、ブリューゲル作品が何点も公開されている。いよいよ世もマニエリスム期に入ってきたか。ところで、ご存知のようにブリューゲルといっても1人ではない。あの《バベルの塔》を描いた有名なピーテル・ブリューゲルの子孫の多くも画家になったため、単に画家のブリューゲルでは区別がつかない。しかもややこしいことに、ピーテルの長男は同じくピーテルという名で、次男はヤンだがその息子(ピーテルの孫)がまたヤンといい、その息子にヤン・ピーテル・ブリューゲルというのがいるから、もうヤンなっちゃう。以前、長男のピーテルは地獄図を描いたから「地獄のブリューゲル」、次男は花の絵を得意としたので「花のブリューゲル」と称されていたが、近年は父親をピーテル・ブリューゲル(父)、長男をピーテル・ブリューゲル(子)、次男をヤン・ブリューゲル(父)、その息子をヤン・ブリューゲル(子)と表記するようになった。でもそうすると、兄弟の兄が「子」で弟が「父」になってしまい、こりゃ変だというので今回は1世、2世と表記している。

さて、本家のピーテル1世は油彩画を約40点しか残してないため、所蔵先はなかなか日本には貸してくれない。今回も他者の筆が入った油彩の共作が2点、1世が下絵を手がけた版画が9点のみで、真筆の油彩は1点もない。いちばん多いのはヤン1世と2世で、全101点の出品作品のうちおよそ半分を占める。出品作家は一族の周辺の画家も含めて10人以上いるのに、この偏りはなんだろう? これと関連してか、所蔵先が明記してあるのは5点のみで、残り96点は匿名の「個人蔵」になっている。この「個人」が同一人物なのか複数いるのか、どこの人なのかわからないが、想像するにワケあって名を明かせないヤン・ブリューゲル大好き人間ではないか。ちょっと興味を惹かれる。

2018/03/29(村田真)

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