artscapeレビュー

Tokyo Rumando(東京るまん℃)「S」

2018年04月15日号

会期:2018/03/02~2018/03/31

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

Tokyo Rumandoの「S」は意欲的な新作である。「S」という謎めいた文字が何を意味するかについては、いろいろな解釈が可能だろう。一番わかりやすいのは、「ストリップティーズ」の「S」ということだ。展示されている作品には、ストリップ劇場の看板や楽屋を撮影したものが多い。実際にその舞台で作者本人がストリップティーズを演じている場面もある。もうひとつ、「ストーリーズ」の「S」という解釈も成り立つ。これまでも、Tokyo Rumandoの作品には物語性が組み込まれていることが多かったのだが、今回はそれがより強く打ち出されてきている。一枚一枚の写真に、いわくありげなバックグラウンドがあるように見えるし、セーター服、網タイツ、能面のような仮面など小道具もそれぞれが自己主張しているのだ。さらに、ワックスペーパーに焼き付けた写真に、透過光を当てて再複写したという、ざらついた、白黒のコントラストの強いプリントも、ミステリアスな雰囲気を醸し出すために効果的に使われていた。

だからこそ、その物語性をもっとくっきりと浮かび上がらせる仕掛けが必要だったではないかとも思ってしまう。写真の並びだけでそれを実現するのはやや難しいので、テキスト(言葉)もあったほうがよかった。《DISCO Red Dress》(2017)と題する映像作品も、静止画像の作品ともっとうまく組み合わせれば、面白いインスタレーションとして成立しそうだ。全体的にまだ未完成な印象だが、ブラッシュアップしていくと、さらにインパクトが強まるのではないだろうか。

なお展覧会に合わせて、ZEN FOTO GALLERYから、同名のスタイリッシュな造本の写真集が刊行されている。

2018/03/08(木)(飯沢耕太郎)

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