artscapeレビュー

『光画』と新興写真 モダニズムの日本

2018年04月15日号

会期:2018/03/06~2018/05/06

東京都写真美術館[東京都]

1932~33年に全18冊刊行された写真雑誌『光画』のバックナンバー一揃いを、古書店から購入したのは1987年頃だったと思う。それらを原資料として『写真に帰れ──「光画」の時代』(平凡社)を書き上げ、出版したのは1988年だった。それから30年が過ぎ、その『光画』の写真家たちの作品を中心とした大規模展が、ようやく東京都写真美術館で開催されることになった。そう考えると、感慨深いものがある。

今回の展示は「同時代の海外の動き」、「新興写真」、「新興写真のその後」の3部構成、147点で、野島康三、中山岩太、木村伊兵衛という『光画』の同人たちはもちろんだが、飯田幸次郎、堀野正雄、ハナヤ勘兵衛、花和銀吾、安井仲治、小石清などの名作がずらりと並んでいる。プリントが残っていない写真については、『光画』の図版ページを切り離し、そのまま額装して展示しているのだが、その差はほとんど気にならない。『光画』の網目銅版の印刷のレベルの高さがよくわかった。

もうひとつ重要なのは、『光画』の前後の時代状況をきちんとフォローしていることである。1930年の木村専一らによる新興写真研究会の結成に端を発した、カメラやレンズの「機械性」を強調する「新興写真」の運動が、どのように展開し、ピークを迎え、終息していったのかが、立体的に浮かび上がってきた。特になかなか参照することができない新興写真研究会の機関誌『新興写真研究』(1930~31)全3冊を完全復刻して、カタログに掲載しているのはとてもありがたい。『光画』と「新興写真」の面白さが、若い世代にもしっかりと伝わることで、1930年代の日本写真史がさらに広く、深く検証されていくきっかけになることを期待したいものだ。

2018/03/05(月)(飯沢耕太郎)

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