artscapeレビュー

Ascending Art Annual Vol.3 うたう命、うねる心

2019年08月01日号

会期:2019/07/04~2019/07/23

スパイラルガーデン[東京都]

若手女性作家グループ展シリーズ第3弾は、「うたう命、うねる心」をテーマに、大小島真木、川越ゆりえ、笹岡由梨子の3作家を紹介。大小島は吹き抜けの巨大空間にクジラのかたちをした絵を5点、天井から吊り下げている。クジラの輪郭に貼り合わせた皮革の表面に、星座や骸骨や瓦礫などを描き、地球環境や生命の循環を表しているようだ。んが、宙吊りにしたため裏側も見えてしまうのが難点。かといって壁に貼ってもおもしろくないし。

川越は昆虫の標本箱を展示しているのだが、虫たちはすべて彼女が創作した架空のもの。赤いつぶつぶを背負っていたり、体の一部が繋がっていたり、ブリューゲルの絵から出てきたようなキモイ虫たちばかり。まあ中身はともかく、標本箱というのは形式的にはタブローに近く、そこに絵画の可能性が秘められているような気がする。

笹岡は映像インスタレーション《Gyro》を出品。カラフルな動物たちが行き交う森のなかで、顔を紫と緑に塗り分けた人物が「許します」「許します」とつぶやいている。動物の顔は人の手で表され、なんともいえず奇妙。なにがなんだかわからないのに、比類のない世界を築き上げていることはわかる。ところで、先ほど見たポーラの「水野里奈展」といい、女性をターゲットにした企業のアートスペース(スパイラルはワコールが運営)が、女性作家を支援する例が増えているのは喜ばしいことだ。理念に合致する作家だけでなく、幅広く支援してほしい。

2019/07/20(土)(村田真)

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