2019年08月01日号
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上海万博博物館、中華芸術宮

2019年08月01日号

[中国、上海]

せっかくの機会なので、今回は上海万博の跡地をまわった。筆者にとっては9年ぶりの再訪であり、新しいオフィスビルなどがたっていたが、国家イベントのレガシーとして懐かしい建築もいくつか残っている。激しい造形の《上海万博博物館》は、その名の通り、万博や世界博などの歴史を紹介する施設だ。入り口には歴代の博覧会の名前と開催年が並び、最後に大阪万博2025が提示されている。



上海万博の跡地の現状


《上海万博博物館》の外観

ロンドン万博(1851)における《クリスタル・パレス》の巨大模型や、複数の万博を通じた近代におけるパリの都市変遷をたどる映像で始まり、各万博の会場模型(ウィーン1873年、シカゴ1893年、サンフランシスコ1915年、など)や新しい乗り物の歴史が続き、ニューヨーク世界博(1939)の《針と球》、ブリュッセル万博(1958)の《アトミウム》、シアトル万博(1962)や大阪万博(1970)の塔など、それぞれのシンボルとなった建築の大きな模型もある。もちろん、ハイライトは上海万博(2010)の記録だ。空間のシークエンスとしては、だんだん登って、最後は屋上に出て、万博会場の跡地を望む。



ロンドン万博(1851)における《クリスタル・パレス》の巨大模型


シカゴ万博(1893)の会場模型


大阪万博(1970)で菊竹清訓が設計した「エキスポ・タワー」の模型


上海万博(2010)を紹介するコーナー

続いて対岸に移動し、《中華芸術宮》を訪れた。上海万博の旧中国館である。斗栱の木組を巨大化したようなデザインによる逆ピラミッド型の赤い建築は、中国風をベタに表現したものだろう。当時、訪れたときはあまりにも長蛇の列で(待ち時間が8時間といった噂も)、最初から入るのをあきらめたパヴィリオンにようやく入ることができた。が、内部は予想していたのだが、エスカレーターで最上階まで登って、スロープで順番にまわりながら降りる空間構成だけで、デザイン的に見るべきものはない。膨大な展示は、団体展のような雰囲気である。中国らしいと感じたのは、絵のサイズが大きいこと。中華芸術宮の外観は、今なおアイコン的な強度をもつ。建築グッズにもなる圧倒的なわかりやすさなのだ。



《中華芸術宮》の外観


《中華芸術宮》の内部。最上階までエスカレーターで登って、スロープで降りてゆく

2019/07/18(木)(五十嵐太郎)

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