2019年08月01日号
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artscapeレビュー

佐藤信太郎 写真展「Geography」

2019年08月01日号

会期:2019/06/25~2019/07/13

コミュニケーションギャラリーふげん社[東京都]

佐藤信太郎が今年2月〜4月にPGIで開催した個展「The Origin of Tokyo」に出品されていた6点組の「Geography」を見たとき、とても面白い可能性を秘めた作品だと感じた。佐藤自身も同じような思いを抱いていたようで、あまり間をおかずにコミュニケーションギャラリーふげん社での個展が決まり、同名の写真集も刊行された。

佐藤が大判の8×10判のカメラを使って1992年に撮影したのは、「東京湾岸の埋立て地にある舗装していない巨大な空き地」である。その鉱物質の地表を、「平面をそのまま平面的に撮る」というコンセプトで撮影したのが本作で、今回の展示ではそれらを125×100センチに大伸しして展示している。この大きさだと、佐藤が本作で何を目指していたのかがよく見えてくる。彼はその後、代表作となる『非常階段東京 TOKYO TWILIGHT ZONE』(青幻舎、2008)の写真を撮り進めていくのだが、「Geography」は、東京という都市を多面的に浮かび上がらせていく彼の撮影行為の原点であり、そのスタートラインを引く試みだったのだ。だがそれだけではなく、一見素っ気ない佇まいの画像には、実に豊穣な視覚的情報が含まれていることを、今回展示を見てあらためて確認することができた。細かな隆起、ひび、裂け目、染みなど、写真で撮影すること以外では捉えることのできない、無尽蔵の物質の小宇宙がそこにはある。

町口覚の造本設計による写真集『Geography』(ふげん社)の出来栄えも素晴らしい。6点の写真の画面の一部をさらにクローズアップした画像、2点を並置するという工夫が凝らされている。

2019/07/03(水)(飯沢耕太郎)

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