2019年10月15日号
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artscapeレビュー

笠井爾示 写真展「Lazy Afternoon」

2019年08月01日号

会期:2019/07/12~2019/07/28

神保町画廊[東京都]

笠井爾示(ちかし)のデビュー写真集は『Tokyo Dance』(新潮社、1997)だから、それからもう20年以上経つわけだ。「若手」写真家の代表格だった笠井も、中堅からベテランの域に達してきた。そのあいだ、写真集の刊行や展覧会の開催がやや途絶えた時期もあったが、このところ『東京の恋人』(玄光社、2017)、『川上奈々美写真集 となりの川上さん』(同)、『七菜乃と湖』(リブロアルテ、2019)、『トーキョーダイアリー』(玄光社、2019)と立て続けに写真集を刊行し、新たな活動期に入ってきている。

女性モデルのポートレート40点による今回の神保町画廊での個展には、笠井の代名詞というべきヌード写真は1点も入っていない。それを期待して見にきた観客には肩すかしかもしれないが、むしろ彼の眼差しの素の部分が写真にしっかりと写り込んでいて、興味深い展示になった。笠井に限らず男性写真家が女性モデルを撮影する場合、どうしてもエロティックな表情、身振りを要求することになりがちだ。今回の写真の中にも、つい職業的なポーズを取ってしまったモデルを撮影した写真がないわけではない。だが大部分の写真は、慎み深さを感じさせつつ、平静な視点で、そのモデルの魅力を引き出している。特に、モデルとその背景となる環境との関係に、細やかに気を配っている写真が多い。写真の選択・構成にも手抜きがなく、会場には気持ちのいい空気感が漂っていた。

ただ、このところの笠井の写真集や展覧会が、どちらかといえば破綻のない、安定した表現の水準に留まっていることにはやや不満がある。そろそろ大作にチャレンジする時期がきているのではないだろうか。

2019/07/19(金)(飯沢耕太郎)

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